大震災が起きて2ヶ月が経った。発生する地震の数は相変わらず多いけれど、規模は小さくなっているようだ。このまま収まってくれることを祈るばかりだけれど、これまでの巨大地震の場合、数ヶ月、もしくは数年後に巨大な余震が起こることもあるとのことで、気が抜けない。
私は東京の市部にある職場であの地震に遭った。真夜中まで同僚2人と仕事を処理をしたあと、たまたま車で通勤してきた同僚に途中まで送ってもらい、残り5kmほど歩いて、2時半に家にたどり着いた。さすがにその時間では、ほとんど帰宅難民者に出会うことはなく、ひたすらトボトボと暗い夜道を歩いた。iPodで音楽を聴きながら。家が近づくにつれ、嬉しさとともに、家の中がどうなっているのかという恐怖が同時に襲ってきて、ドアを開けるのが怖かったのだけれど、幸い、積んであった書類の一部が落ちた以外には大きな変化はなかった。あとからピアノが10cmほど動いていたのに気づいたのだが。
まずはシャワーを浴びてさっぱりし(最初水しか出ず、マイコンメータが作動したこに思い至った…)、夕飯代わりに帰宅途中に買ったカップラーメンとコーヒーを飲んでようやく人心地がついて、PCで各地の被害の状況を確認したのち、ラジオをつけっぱなしにしたまま、何度も緊急地震速報が鳴って、揺れるなかで、布団にくるまった。次の日にもっと怖ろしい事態になるなどとは知る由もなかった。
実は、あの夜の緊急地震速報の音(携帯ではなく、住居に設置されている)がトラウマになり、ひとりで家にいることができなくなってしまった。2ヶ月だってようやくそのトラウマから抜け出しつつある。
翌日、福島第一原発が爆発した。その後、同じような爆発が2度起こった。そして福島はフクシマになり、チェルノブイリをも上回る放射能汚染がフクシマを襲い、爆発した後の風向き等により原発の北西だけでなく、東京、埼玉、千葉、群馬も汚染された。
http://3.bp.blogspot.com/-DBVapUJUi3k/TdC-jGmr6LI/AAAAAAAAQfI/RQZQ9R1um_U/s1600/WSPEEDIMarch16TohokuKantoRegion.jpgところが、東電も政府も保安院も原子力安全委員会も文科省もこの事実を隠し続けることになる。そしてその事実を2ヶ月も経ってから知らされた国民の怒りは爆発した。
なるほど、この情報隠蔽は許せない。人命の軽視も甚だしい。
しかし、このような隠蔽は許せないものの、第二次世界対戦中のことを思い起こせば、日本という国の体質なのではと疑いたくなるほどよく行われていることで驚かなかったのだが、何よりも驚いたのが「情報格差」なのである。情報格差というのは、先進国と発展途上国、民主国家と非民主国家、メディアリテラシーの有無によって起こるものと思っていたが、そうではなかった。枝野官房長官が「ただちに人体に害はない」を繰り返していた頃、ある大手広告代理店(もちろん東電を最大の顧客のひとつとしているのだろう)は、その社員に自宅待機、その社員の家族にも外出を控えるように呼びかけていたのだ。その頃、電池、非常用食料、水を求めて大勢の人たちが食料品店のはしごをしていたと言うのに。利害関係を結んでいる当事者たちは、自分たちさえ助かればよく、他の人の命などはどうでもいいのだ。しかも、この当事者の中に、東電や広告代理店のすべての社員が入っているわけではないであろう。おそらく、社員のヒエラルキーはきわめて厳格に線引きされているのではないだろうか。
東電の社長がしばらく表舞台に立たなかったのは、屋内退避か、もしくはもっと別の安全な場所に退避していたのでは、と勘ぐりたくなるのも無理はない。東電や某大手広告代理店、官僚たちの家族が、3月の中旬にどこにいたのか調査したら、きっと面白い結果になるだろう。確か乙武さんのtwitterに、爆発があった後東京駅に人が殺到していたと書かれていた。一方で私たちのような利権を持たない国民は、福島を応援し、もっとその野菜を食べようと奨励されていたのである。
しかし、そのように早々に退避していた人々も、帰京をしたのちは、自衛をするしかない。放射能汚染で怖いのは、体外被曝ではなく、体内被曝だからだ。
その後、放射能汚染が懸念される中、東京の水から乳幼児が摂取してもよいとされる基準を超えた放射性物質が検出されて大騒ぎとなり、街からペットボトルの水が消えた。その数日後、セシウム等が基準を下回ったので安心して飲んでもよいということだったが、果たしてどこまで信用できるだろうか。東京の水瓶は、群馬の利根水系、埼玉の荒川水系、多摩水系の3つから水が供給されているが、上記のSPEEDIの汚染地図から考えると、放射能汚染を免れたところはどこにもない。そして、土壌汚染も深刻であり、そして土壌汚染は、その収穫物を通して全国に放射能汚染を広げる可能性がある。汚染された土壌で収穫された食材を食べないように努力したとしても、それが飼料として家畜に与えられないという保証がないからだ。
ファーストフードの一部(ヘルシーなサンドイッチで有名な店や、国産肉使用を謳うハンバーガーを販売する店)では、応援と称して福島産の野菜を使用するそうだ。それを責めるのではなく、このようにきちんと情報を開示してくれるのは大変ありがたい。それを食べるかどうかは私たちの選択だからだ。家人にも外食に関しては少々気をつけるように言い含めた。しばらくは安心できる生産地の食材を購入して、できる限りおうちごはんにするしかない。少々(いやかなり)気が重い。
さて、計画停電などしなくても、実は電力は足りていて、福島第一原発から国民の目を逸らすための策だったと言われている。今思えば子ども騙しのように思うが、当時はまんまと騙されて、日々計画停電表とにらめっこし、冷凍庫のものを保冷バッグに入れたり、お湯を沸かしてポットに詰めたり、大騒ぎをしてしまった。
そして、メルトダウンが報道された今、また東電や報道機関その他は私たちを騙しているような気がする。震災当日から予想され、翌日にはわかっていたメルトダウンを今頃になって報道し、その見事なタイミングでNHKのETVが「放射能汚染地図」という番組を放送した。最初から、メルトダウンがわかっていたのに、「あの工程表」を発表しているのは、どういうことだろう。つまり、「工程表の見直し」という報道は真っ赤なウソで、最初から工程表とは名ばかりのものだったということではないだろうか。報道機関はなぜそこを追究しないのだろう。あっ、そうか、東電帝国の植民地だからか。
【追記】今朝(5月18日)の新聞によると、東電は工程表の改訂はしたものの、収束時期に関しては変更なしと発表したそうである。信じるしかない。
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