2007年7月18日付の朝日新聞朝刊に『あたらしい憲法のはなし』を出版した童話屋の編集長田中和雄さんの記事が掲載されていましたので、別のブログに以前書いた記事を載せて、この本の紹介をいたします。この本は、私がここ数年読んだものの中で一番いい本だったと思うものです。
「憲法論議よりも知るが先」
「みなさん、あたらしい憲法ができました」。こんな書き出しで始まる中学1年生向けの社会科の教科書を、憲法が施行された1947年に文部省(当時)が発行した。この教科書を復刊した「あたらしい憲法のはなし」と「日本国憲法:が01年の発行からこれまでにそれぞれ訳25万部を売り上げるヒット作になっている。出版した児童書出版社「童話屋」の編集長田中和雄さん(72)は「護憲、改憲と言う前に、まずは憲法を知ってほしい」という。
─2007年7月18日付朝日新聞
『復刊 {{あたらしい憲法のはなし}}』は52年には教育現場から姿を消している。実業教科書社の翻刻を定本とする本書だが、「みなさん、あたらしい憲法は、日本国民がつくった日本国民の憲法です」と語り言葉で記す文の格調は感動的だ。
ー2006年1月22日付朝日新聞
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昭和22年(まさに現在の日本国憲法が施行された年)に文部省より中学生の教科書として発刊され、昭和26年には(時の政府の圧力があったのだろう)廃刊になってしまった本である。
あっと言う間に読めてしまうが、非常に心に残る本である。あたらしい憲法がいかに素晴らしいものであるかを力強く訴えている。第二次世界大戦で深い傷を負った国民に、精神的な豊かさを保証する憲法。どれほど国民があたらしい憲法を歓迎したか、手に取るようにわかるのである。それから半世紀以上の時を経て、物質的に満たされてしまった日本国民は、精神的喜びを味わうことを忘れ、或いは知らず、進むべき道を誤ろうとしているように思える。
この本を出来るだけ多くの人に読んで貰いたいと願うばかりだ。老若男女を問わずに。そして、共に憲法について、その黎明期に国民全体に希望にあふれた前途を約束してくれた憲法について考えてみる必要があるのではないか。
出版元の童話屋のまえがき(あとがきにもなっている)にも心打たれたので、ここで一部を紹介しておきたい。
* * *
五十年前、地球は青かった。だが子どもたち、いまぼくたちが住んでいる地球は、ガガーリンが見た青よりも、心なし、くすんで見えないか。
(中略)
ぼくたちにできることは、三つある。一つは、浪費の抑制。地球は宇宙に浮かぶ小さな星だ。太陽光のほかにはよそから何も供給されない。二つめは大自然と共生すること。人間が生きるためには他のいのち、植物や動物たちと手をとり合って暮らすことが大切だ。地球上のいのちは、巨大な生態系を形成して、億という年月をかけて悠久の循環をくり返し、一瞬もその営みを止めることはない。
(中略)
未来の子どもたちにこの青い地球を遺していこうーーーそうぼくたちが決心し、勇気ある行動をとれば、地球は悠久のいのちの星として、青く輝きつづけるだろう。
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